【こころの病気】うつ病の薬物治療

2013.12.27

 うつ病の薬物治療では、主に抗うつ薬が使用されます。基本的には、1種類又は2種類の抗うつ薬で治療することが前提となっていますが、不安、不眠などの症状に応じて抗不安薬、睡眠薬などの薬が併用されることもあります。なお、抗うつ薬だけでは十分な効果が得られないうつ病では、抗うつ薬と並行して気分安定薬あるいは抗精神病薬などに分類される薬を使用することがあります。薬の作用はそれぞれ違っており、薬の役割をよく理解して、患者さん自身が納得して服用することが大切です。

 現在さまざまな種類の抗うつ薬があります。日本では1959年からイミプラミンという薬に代表される三環系抗うつ薬が使用されています。次に四環系抗うつ薬が使用されるようになり、その後、三環系や四環系とは異なる化学構造をもったトラゾドンという薬が開発されました。日本では1999年からSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という薬が使用できるようになり、現在では4種類のSSRI(フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、エスシタロプラム)が使用可能となっています。また、2000年からはSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)も使用可能となり、こちらも現在では2種類のSNRI(デュロキセチン、ミルナシプラン)が使用可能です。2009年には、SSRIやSNRIとは異なる作用機序のNaSSA(ノルアドレナリン・セロトニン作動性薬)が使用されるようになりました。また、三環系、四環系、SSRI、SNRI、NaSSAに属さないスルピリドという薬が日本では抗うつ薬として認可されています。

 医師は薬物治療において、患者さん一人一人の症状に合わせ、作用と副作用のバランスを見ながら、薬の種類や量を決めています。薬は、医師に決められた通りに、正しく服用してこそ十分な効果が得られ、安全性も高まります。

 抗うつ薬によっては、服用してから効果が現れるまでに1~2週間ほどの時間が必要な場合があり、効果を見極めるためには、ある程度時間がかかります。効果のレベルも患者さん個々で差があるため、少し気長にお薬と付き合うくらいの心構えが必要です。通常は、少量から開始して徐々に体に慣らしていき、様子をみながら量を増やし、十分量を維持することが大切です。