リワークプログラムに意味があるの?

2019.04.24

当院でも、この四月からリワークプログラムを始めています。リワークプログラムとはどのようなものでしょうか?リワークプログラムのある病院、メンタルクリニックなどのHPを開けば、目的、そのためにする具体的な内容について一般的な説明、その施設ならではの特徴が記載されています。また、日本うつ病リワーク協会のHPにも解説がなされています。

 読めば、主にうつの患者さんで休職している方のリハビリとして役立つものらしいということは分ります。ですが、普通に医療機関に通い診察を受け、薬を飲み(必ずしも全員ではありませんが)、休養をとり、落ち着いたら軽い運動をして・・・では駄目なのでしょうか?症状が無いときは普通に働いていたのですから。

 確かにそのプランで復職されている方もいるでしょう。ではなぜ?

医療経済的には、リワークプログラムで行う、生活リズムを整える所から始め、自分の思考法を知り、ストレス対処やコミュニケーションの技法を練習し、習得まで一般の個人診察で行うのは、なるべく多い人数を診ないといけない日本の医療事情では時間が割けないので集団で、という事情もあると思います。

 そのような事情があるにせよ、リワークプログラムの大切な点は、集団で行うという点につきると思います。当院のリワークプログラムでも認知行動療法をやったり、SSTをやったりしますが、(あくまで)極言すれば、その療法に大きな意味があるわけではないと言ってしまって良いのではないかと思うのです。

 宇宙と自分、地球と自分、社会と自分、家族と自分、会社と自分、上司と自分、同僚と自分、後輩と自分などなど、関係の網の目の中で成立するのが人間です。その中で一つの理念を元に方針を組み立て、経済活動を行い社会貢献する集団が会社と言えるでしょう。

 その集団の中で、過労であったり、人間関係であったりで傷つき、症状を呈する所まで至った方々がリワークプログラムに参加されます。でも、なぜ「わたし」なのでしょう?会社側の要因を全て否定するわけではありませんが、自分が駄目な人間だから?毎日毎日頑張っているのに上司や周囲に頑張りを認めてくれないから?自分の能力を過小(過大)評価されるから?人一倍仕事の事を考えているはず?振り返るといろんな考えが湧いてくるかもしれません。

 我々は、その理由を個人特有の課題があり、それを分かってはいるけれど克服できなかったり、それを無視していたり、場合によっては気づかずに集団活動(仕事)をしていた結果が「うつ」などの症状に結実したと考えます。「集団」の網の目の中で起こる、「わたし」の課題。これを見つけ、リハビリしていくのがリワークプログラムの要なのではないかと思います。なので、復職、(再)就職など同じ目的をもった人々とスタッフでチームを形成し、対話していくことが大切なのだろうと思います。大げさかもしれませんが、国に憲法があるように、会社に理念があるように、人間にとって「わたし」にとって、生きるということは?働くということは?という信念にまで届くものでないと、小手先の技法を身につけても、役には立ちますが、再発を予防するのみならず、well-beingの境地になれないと思います。

 大きな事をいいました。我々のリワークプログラムはそれを達成していますとは言い切れないのも事実ですが、当院の理念からもそこが大切だということは考えています。御興味を持たれた方は、主治医(他院通院中の方も利用できます)、当院メディカルサポートセンタースタッフに相談頂ければと思います。