心理士の視点から捉える「生きる」「働く」

2020.03.01

今回のスタッフコラムでは、「生きる」「働く」を心理士の視点から考えていきます。

仕事や家事を含めた日常生活を送っているとき、達成したい目標として掲げていることが気づかぬうちに遂行しなければならないルールや制約に置き換わってしまうことはないでしょうか。

例えば、「毎朝、5時に起きる」という目標を設定したとします。上記の場合、早起きすることを「5時に起きなければならない」という従うべきルールとして捉えてしまいがちです。そうなると「毎朝、5時に起きる」というルールを守ることだけにとらわれ、「必ず22時に寝る」と過度に就寝時間を気遣ったり、目覚まし時計を何個もセットしたりしてしまいます。これでは「毎朝、5時に起きる」ことが不自由で窮屈な習慣になっていきます。いつの間にか「毎朝、5時に起きる」ことは目標ではなく「しなければならないこと」になり、そのルールから逸脱しないことに精一杯で朝早く起きることを縛り付けられる制約と感じてしまい、ワクワクすることも楽しみや喜びを実感することもできません。

そういった状態を少しでも和らげるため、心理士の視点から考えるポイントが1つあります。それは自分の内側から出てくる「~したい」「~でありたい」という欲求を大切にすることです。上の例で言えば、「毎朝、5時に起きなければならない」というルールに縛られるのではなく、「朝起きて~したい」「~という自分になりたいから早起きしたい」と自らの欲求を実現するために「毎朝、5時に起きる」ようになるということです。このように「~したい」という欲求は、「毎朝、5時に起きる」ための強い動機づけとなります。いつの間にか「毎朝、5時に起きる」ことは自分を成長させたり、「~したい」という欲求を実現させたりするための手段の1つとなり、朝早く起きることでワクワクしたり、楽しさや喜びを実感することができるようになります。

私たちの日々の生活も同様です。「仕事(趣味)をしたい」と思っていても、つい意識しないところで「仕事(趣味)をしなければならない」と義務感に陥ってしまいがちです。しかし、上述の通り「~でありたい」「~という自分を実現させるために仕事をしたい」と自分なりの欲求(≒動機づけ)を発見することができれば、仕事(趣味)は自分を縛り付ける制約ではなく、自分の人生を「よりよく生きる(well-being)」ための手段となり、ますます人生をワクワクとした充実したものにすることができると思います。

心理士が提供している「よろず相談」の役割の1つは、何らかの要因で捉えづらくなっている「~したい」という欲求を、ご自身が発見しやすくするためにお手伝いすることです。ルールや制約に縛り付けられるだけでなく、人生をワクワクとした充実したものにするため、自分の欲求を見出すことは重要だと考えています。当院をご利用の方はどなたでもご相談いただけますので、興味・関心のある方はぜひ「よろず相談」をご活用ください。

 

臨床心理士 橋本隼人