【こころの病気】うつ病への認知療法

2014.01.25

 人は出来事を、自分の心の癖(感じ方や理解の仕方)でみて、その結果、喜怒哀楽に至ると認知療法では考えています。単に、「癖」で済むものもあるでしょう。ですが、癖によっては健康的な感情の振れ幅を超え、うつ病になりやすい「心の癖」があります。ですから、同じ出来事を、うつ病になりやすい人とそうでない人が体験すると、両者の感情には違う結果が生まれます。

 例えば、職場である仕事上の誤りを指摘されたとします。うつ病になりやすい人であれば、それを「責められている。また失敗してしまった」と感じ、それは「自分という人間がちゃんとしていないから」だと理解し、自己否定し、憂鬱になります。そうでない人は、「人はいつも完全にできる訳ではない。出来るだけの事はしている」と感じ、「だけど次から気をつけよう。そのためにどんな工夫ができるかな。指摘してもらって良かった」と考え、自分を肯定的に理解します。その結果、憂鬱にはなりません。同じ出来事を体験したけれど結果が違う。その間には「心の癖」が働いているのです。

 うつ病になりやすい「心の癖」はどれも、認知療法の視点から言うと極端で、自分を辛くさせてしまいます。そんな癖であってもこれまでの人生で、あなたの役にたってきた事もあるかもしれません。認知療法では、その「心の癖」を全て無くそうとするのではありません。癖を見つけ出し、見直しをします。良さは残して、ほどよく適応的な考え方に修正し、憂鬱に陥りにくくする治療法なのです。

 では誰にでも認知療法が良いのでは、とか、薬物療法は要らないのではと思う方もいると思います。ここでは認知療法の一部を、ごく簡単に紹介しているだけです。病状によっては、認知療法よりも、まず休養をとることが必要な方もいますし、薬物療法の必要な方もいます。他の治療法が適している場合もあります。

 当院では、うつ病に対する集団認知療法を実施しております。認知療法があなたの病状改善に役立つかは、主治医にご相談ください。